天国でぐっすりと。
留学が始まってすぐ、同じく交換留学に来ている日本人学生の間で僕のことがある理由で知られるようになる。
「東北からきた白井君って知ってる?」
「ああ、あの家無き子でしょ!」
こんな形で知られたくはなかった、初めてあった人に「あ、僕、家ない人です。」と言うとだいたい「あーあの人ね。」と言う既に承知してます顔をされる。
そう、僕は留学前の寮の申し込みに失敗し、1年間住むところ未定のままデンマークに乗り込むことになったのだ。日本から探すより到着後に現地で探す方が見つかるだろうということでコペンハーゲンで家探しをすることを決意。生まれて21年実家暮らしの僕にとって、初・一人暮らし、初・自炊、初・家探ししかもin 海外で、
まさに、初めての盛り合わせ、初めてのごった煮、初めて on 初めて、と言う状態なのであった。
家が見つかるまでは、ホステルに滞在することになる。
同じホステルにいつチェックアウトするかもわからないまま宿泊したことがないため、結構ハラハラドキドキであった。
知人にこの話をしたところ、行く前に「Hostel」って映画みるといいよ、とのこと。
どこぞのHostelを舞台に繰り広げられるラブロマンスだと期待していた。デンマークについたらその主人公は僕になり、ヒロインは北欧美人の黄金色の髪の乙女になることを思い描いていた。
しかし、その空想は一瞬にして打ち砕かれたのであった。
その映画は、
ゴリゴリのスプラッター映画だったのである。
東欧のあるホステルに行けば絶世の美女とオイシイ思いができると聞き旅に出る3人の男。噂通り3人はオイシイ思いをすることになるが、次の日、1人が帰ってこないことに気づく。そしてその次の日もまた1人が帰ってこない。何とその街は、町ぐるみで人身売買をして、買ったものは好きなようにそれを解体していいと言う恐るべきことを行っていたのだった。。。。
僕、怖いのと痛いのが苦手です。拷問シーンは手で目をふさぎながらなんとか乗り切りました。
背筋に走る冷たい感覚。
ふと予約したホステルの名前を見ると、
何と、「Hostel Sleep in Heaven」
純粋に思いました、あれ、僕は召されるのかな?
そんなこんなで過ごしたホステルでの2週間を僕は忘れません。キッチンがないので自炊はできません。物価の高いコペンハーゲンで毎日外食はできずバナナだけで乗り切った日もありました。食パンとインスタントで作った味噌汁の相性の悪さに泣きました。風邪をひいてしまったため寝ていると、朝は8時から爆音の工事がアップテンポで始まります。
ドミトリー部屋のため毎日10人くらいとともに寝ていました。ちょっと仲良くなってもすぐに次の目的地へ友は旅立ちます。目的地がある人はいいなぁ〜、誰か僕に目的地をください!ていうか滞在場所をください!無滞在場所人間白井です。
でもやっぱ、毎日ルームメイトが変わるわけですから、友達も増えるわけですね。
どこに住んでるんだっけ?って聞かれると、
毎日変わる10人のルームメイトと楽しく暮らしてるよ、なんて意味深にミステリアスなオーラ満開で言えちゃうわけです。
キッツイこともあったけど、なかなか充実した2週間でしたね。美女の誘惑も誰かが消えたりすることもなかったですけど。
ま、滞在延長しようとしたらもうこれ以上空いてないので2週目以降は出て行って何て言われちゃって追い出されたんですけどね!!
家なき子の生活は続く。